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自分を深める学習 報告

投稿日2021/10/18

自分を作るもの

 

私が自分を深める学習を担当するようになって十数年経ちます。自分を深める学習で生徒諸君と共に考えたいのは、「他」とのつながりです。(つながりという言葉の解釈については、人によってまちまちかも知れませんが、ここでは「何かしらの関係がある、無関係ではない」といった意味合いで使っています。本来は、つながりとか関りといった言葉の定義を整理することが先なのかもしれませんがご了承ください。)自分にそのつもりがなくても自分は周りのものとつながっています。つながり方はいろいろとあって、普通つながりというと、自分にとって「良い」ものを指すことが多いような気がします。自分にとって「良くない」ものはつながっていない、という感じなのでしょう。でも実はそんなことはなく良くも悪くも自分と「他」はつながっていて、そのつながり方が自分から見て良いか良くないかの違いがあるだけなのです。

 

このようなことを書くと、皆さんは私のことを周りとのやり取りが上手な人なのかと思うかもしれませんが、そんなことはありません。むしろとても下手くそです。かのフロイトの原因論よろしく、あれは○○が悪いのだ、これな△△のせいだ、と考える傾向が強い人間です。でも、心理学者アドラーの目的論によると過去にあった出来事はただの事実に過ぎず、そこにどのような意味づけを自分は行ったかが問われるというのです。良い意味付けを行ったのか、そうではないのか。そしてそれは自分が何かしらの目的があって行った意味付けであるとアドラーは言います。例えば、自分のせいにすると自分が傷つくから他のせいにして自分を守っているというのです。つまり、今の自分があるのは周りのせいではなくすべて自分で選んで進んできた形なのだということになります。そして、今の自分に満足していようが不満があろうが過去の何かのせいにするのではなく、自分が何かしらの目的をもって選んだ結果だと認めなくてはならないとも言います。だから人とのつながりは自分にとって良いつながりだけが大事なのではないということになります。遠隔授業を受けていたり、同じく遠隔で担任の先生から連絡を受けたりそれに応えたり、あるいはSNSで友人と他愛のない会話を交わしたりしているとつながっている気になってしまう。確かにある意味ではつながっていると言えるのでしょうが、スマホの電源を切ってしまえば気が合わない相手は目の前から消えるというようなことは実際に対面する場合の周囲との関りでは起こることはありません。頭を使って色々と考えて周りとのつながり方を学ぶことが実は大事なのだと思います。振り返れば自分自身に向けての言葉だなぁとつくづく思います。「他」とのつながりがあって初めて自分がある、つまり、「他」とのつながりが今の自分を作ってきたわけですしこれからの自分も作っていくのです。そして何より大事なのは、自分と「他」とのつながりはお互い様であることなのだと思います。つまり、自分は他人にとってはその人物を作り上げる「他」のうちの一人であるということなのです。

 

コロナウィルスへの対策で遠隔授業が増え、実際に対面する活動が減り、学校行事も従来のように行うことができない日々が続いていますが、こういう時だからこそ、つながるとはどういうことなのか、自分は一体何とつながっているのか、本当につながっているのか、といったことを考えたいものです。自分を作ってきたものは何なのか、これから自分はどう作られていく方がいいと思うのか、周りは自分にとってどのような存在か、そして自分は周りにとってどのような存在なのか、そういったことに思いを馳せる時間が持つ意味は大きいのかもしれません。

 

自分を深める学習 1I組・2H組担当:神田上巳