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2020年2月 1年生 本当の自分とは? (2/4)
1年生の授業では、2011年に放送された
NHKの番組「Q~わたしの思考探求~」の「自分とは何か」の回を視聴しました。
哲学者:鷲田清一×モデル:冨永愛の対談形式です。
冨永さんは人気のファッションモデルですが
小さいころは背の高さに悩んでいたようで
その中で「自分って何なんだろう?」
という疑問を抱えていたそうです。
対談の中で鷲田先生は冨永さんに
「タマネギの皮をむくように
モデルもいつかはやらなくなる
母親の役目もいつかはしなくなる
というように人間も1枚1枚自分の皮をむていったら
最後に芯=本当の自分が残ると思いますか?」
と問いかけます。
「みんな本当の自分がどこかにあるはずだと幻想を抱いているだけではないのか」
と続けます。
この部分を授業で取り上げてみんなで考えてみました。
・どんなに探しても自分というのはなくて、見つからないと思う。前までは、今の自分は本当の自分だと思っていたけど、よく考えてみたら本当の自分はなくて、今まで生きてきた経験で何となく、で本当の自分っぽいのが出来上がったのではないかと思う。
・誰かに必要とされることに人間の存在価値があるって言葉を聞いたときに、自分には他者を必要としているけど、他者にとって自分は必要なのか考えたときに、正直答えは見つからなかったです。「本当の自分は何なのか」たまにふとした時に考えるけど、結局何をしていても、何を好きでいようとそれが本当の自分だし、こんな人になりたかったわけじゃないと思う出来事もたくさんあるけど、どれもすべて自分だからななぁ、とよく思っていた。けど今回、「本当の自分がどこかにあるはずだと幻想を抱いているのではないか」という言葉を聞いて、確かにそうだと思いました。全部全部本当の自分だって受け止めずに、もしかしたらそれは幻想かもと思うことで、逃げ場のような考えができて心も軽くなりました。
・私は今まで何となくイメージで、自分は1本の木でできていると思っていました。軸になる自分がいて、そこから枝分かれした先にある葉がそれぞれの場面での自分であると思っていました。でも今回の話を聞いて、今まで木があると思っていたのが、本当は木はなくて、様々な場面、種類の葉が散らばっているんじゃないかなと思うようになった。よく考えると、家での自分、学校での自分など、いろんな葉がある中、どれが本当の木の軸になるのかわからないなと思ったからです。
・あなたの思うことをと言われ、ものすごく難しいなと思いました。私はタマネギの話を聞いて共感しました。私も芯(本当の自分)は残らないんじゃないかと思います。理由は、1つ1つ全てが自分であって、本当も嘘もないと思ったからです。成長していく度に人は変わるものだし、周りの環境が変われば自分も自然と変わると思います。だから複数の他者を持つことが大事という意味も、少しだけど理解できる気がします。多くの他者と出会うことでたくさんの自分を見つけ、知れると思います。真の自分を見つけるより、たくさんの自分と出会うべきだと思いました。それによって多くの他者の他者にもなれると思います。
・自分はあると思う。本当の自分とは、自分の長所や短所などを含めて自分だと思うから。それがある時点で本当の自分はあると思う。他者から見た自分と自分から見た自分は違って、自分しかわからないこともあるし、他者から見ることでしかわからないこともあって、それも含めて本当の自分。他者に必要とされて自分があると思えるなら、複数の他者を持つことも大事だと思う。
・対談を聞いて、自分も芯が残るわけではないのだろうと思った。私たちが求めている本当の自分とは、自分が考える理想の自分なのではないかと思う。理想の自分があると仮定すれば、今、自分たちが行っていることは本当の自分じゃないことになるから、何かミスなどを起こしても、本当の自分ならもっとできるはずだからと自分自身の中に逃げ道を作っているのだと思う。そして自分がないからこそ自分の属するまとまり、肩書きに合わせた自分が複数出来上がり、複数の他者となり生きていけるのではないかと思う。
・この対談でも出ていたように、人間は他者に必要とされることで、自分はどういう人間なのか、本当の自分は何なのかわかってくると思います。自分では自分のことはわかりづらくても、他者からの言葉などで自分はこういう人間なのかなど、わかってくることもあると思います。なので、本当の自分、自分とは何なのかをわかるためにも周りに他者がいることは大事です。なので、この対談で言っていた「複数の他者を持つことが大事」というのは本当のことなのかなと思いました。
・「個性」や「アイデンティティ」という言葉があるように、人は誰しも違うものを持っている。よってそこに本当の自分が残るのだと思います。なぜならば、「個性」とは自分にしかない固有のもの、「アイデンティティ」とは自分らしさを表現したものである。よって、どちらも自分の中に秘めたものを表した言葉だと思うので、そこに本当の自分を見出すのだと思います。
難しい問いかけに一生懸命考えています。
他者とのかかわりがあって、その一つ一つの積み重ねで今の自分がある
ということは実感として感じているものが多いようです。
「自分とは何か」ということを考えるということは哲学です。
哲学と聞くと難しい話を連想して敬遠してしまいがちですが
肩に力を入れなくても自分の存在について思いを巡らせることは誰にでもできます。
この授業では、そんな時間が生徒諸君の日常に少し生まれることを期待しています。
ご家庭でも、是非授業の話をお子さんに聞いてみてください。
お父様、お母様方の意見などもお話しいただければ授業者としてこんなに嬉しいことはありません。
自分を深める学習 1年A組担当:神田上巳