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2019年7月 出前授業(7/9)

投稿日2019/07/09

近隣の公立中学校から出前授業の依頼を受けたので行ってきました。

部活動も引退し始めるこの時期に、3年生を対象に進路指導の一環として行われるものです。

しょっちゅうというわけではありませんが、たまにこのような機会に恵まれます。

中学校からのリクエストは、特色のある授業を展開してほしいということですので

本校では「自分を深める学習」の出前授業を行います。

 

40分を2コマという依頼でしたので

「他己紹介」と「生活必需品」という内容をやってきました。

 

まず「他己紹介」です。

私が1年生の最初の授業で行うものです。

 

 

 

これから皆さんにはペアになってもらいます。

皆さんはもう3年間の付き合いがありいますから、お互いに知っている同士でしょう。

でも、私は今日が初対面ですので、私に伝わるように相手の人のことを紹介してください。

 

 

さすがに友人同士です。

色々とメモをとりながら、あれを言おう、これも言おうと相談しています。

しばらく相談の時間を取ってから他己紹介を始めます。

 

相手の良いところを言うペアもあれば

でも、こんなところがダメです、と持ち上げてから落とすペアもあります。

誕生日、血液型、所属する部活動、好きなモノ・・・

メモしたものを見ながら、一生懸命に紹介してくれます。

 

一通り終わったところで

どうして「他己紹介」をしたのか説明します。

 

部活や好きなモノ、優しいとか足が速いとか

そのような特徴や肩書だけでその人物を説明するのって難しいと思ませんか。

言葉では言い表せないけど、伝えたいこともあったと思います。

「人」の説明って難しいものですが

他人ではなく自分だったらどうでしょう。

もっと難しいと思いませんか。

肩書きなどでは表せない、その「自分」について考えるのが

「東京成徳の自分を深める学習」です。

 

 

40分という時間ですのでどれくらいのことが伝わったのか伝わらなかったのかわかりませんが

生徒の皆さんが書いた感想の一部を紹介します。

 

・他人を紹介することがこんなにも難しく、「その人」の個性といっても、どれだけ言葉を重ねても表現できないものなんだ、ということが分かった。これを自分でやるとなると、もっと難しく、少し違った風になるんじゃないかな、と思う。もっと、自分や他人を見てみようと思った。

 

・周りから見て自分はこんな風に見えていたんだなと、日ごろの自分の行いがわかった。自分でもあまり知らない一面を友達は見ててくれてて嬉しかった。関わったことのある人でも、いざ紹介するとなるとその人の「どんな部分」「特徴」をまとめるのが難しかった。

 

・とても難しかった。2年半過ごして知ってるって思っている相手を説明しなさいと言われたら、説明するのは言葉が出てこない。改めて自分を深め、相手を知るということができて良かった。

 

 

 

 

2コマ目には「生活必需品」をやりました。

教室に入り、簡単に自己紹介をした後に、

 

自分が生活していくのに、これは絶対にないと困る、というものを各自10個挙げなさい。

 

と伝えます。

 

では、3~4人のグループに分かれて、自分たちの生活必需品を10個決めてください。

よく話し合って、グループの全員が納得するものにしてください。

 

ワイワイと楽しそうに決めています。

 

10個決まったら、黒板に書いてください。

 

しばらくすると、数人ぱらぱらと前に出てきて書き始めます。

全グループで揃ったところでみんなで見てみます。

 

スマホ

風呂

飲食物

くつ

お金

電気

 

などが並びます。

「家族」「愛」といったものもありました。

 

面白いですねぇ。

食べ物と飲み物は「飲食物」でまとまっているのに

「家」と「風呂」は別なんですね。

「服」と「くつ」も別なんですね。

 

などと言って、ひとしきり盛り上がった後、

脚本家、演出家の倉本聰氏の「人」(2004年8月22日 日本経済新聞の全面広告より)を配布し

黒板に書かれているものと比べてみました。

 

「人」の中で倉本氏は

自身が主催した富良野塾の塾生があげた生活必需品は

1位「水」、2位「火」、3位「ナイフ」、4位「食物」、5位「着る物」・・・14位「人」

と続いたと書いています。

一方、都会の若者は

1位「金」、2位「ケイタイ」、3位「テレビ」、4位「車」、5位「家」

となったとか。

 

豊かと言われる都会の暮らしでは

本当に必要なものが豊かさの中に埋もれてしまって

わかりづらくなっている。

14位の「人」は異性でなくともよいとのこと、

必ず人が必要だという意味だそうである。

人は一人では生きられないことを改めて思い出させられた

と感じたそうです。

 

 

 

このような話をしてから

 

でも、便利なモノを欲しがってはいけないんだと思う必要はありません。

便利なモノはあったほうが、そりゃぁ便利ですから。

それでも、なくてもいいのに欲しがるとか、本当は必要なのに大切にしていないとか

そういうことが自分に起きていないか振り返ることが必要なんですね。

 

と続けます。

 

こちらも、生徒の皆さんが書いた感想の一部を紹介します。

 

・生活必需品の意味が、この便利すぎる生活で感覚がマヒしていたことが分かった。そして今の都会で暮らしている人の大多数の人が、僕と同じく生活必需品の意味が分からない人が多いと思います。家族だけでも本当の意味を気付かせたいと思うような授業だった。

 

・今の生活が豊かすぎて本当に大切なものを忘れている気がする。もっともっと考えて、自分が今忘れていることを気づけるようにしたい。

 

・面白かったです。必要なものとそんなに必要じゃないものがあるから、それを見極めなければならないってことが分かった。

 

・自分の暮らしを支えている元である「人の温かみ」などを考え直す良い機会になった。

 

・生活に必要な物は、自分が思う物と他の人が思うことが異なりました。この授業で、生きるために本当に必要なものは何なのか、深く考えることができました。今あるものを当たり前だと思わず、感謝の気持ちを持って生活したいです。

 

 

この内容は本校では1年生の2学期の初めにやっています。

夏休みに1年生は2泊で長野に校外学習に出かけますが

1泊はキャンプ場で自炊してテント泊を経験します。

ほとんどの者が初めての体験です。

その経験を経ての2学期ですから、

今回の出前授業で出たものとは違った回答になるのですが

伝えたいことは同じです。

 

 

 

普段の授業で行うのとは違い

次の授業で前回の振り返りをする、といったことができませんから

出前授業では1回で何が伝えられるかを考えて行っています。

もし、うちの学校もお願いしたいという声がありましたら

是非お知らせください。

 

自分を深める学習:神田上巳