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2019年1月 1年生 あなたは誰か? (1/22)
1年生の3学期のテーマは、「自分とは何か」です。
前回の記事にもあったように、3学期は哲学者:鷲田清一×モデル:富永愛の対談の映像を視聴しますが、その前に生徒に考えてみてほしいことがありました。
それは「あなたは誰か?」ということです。
授業の初めに「あなたは誰か?」と聞くと、一番多く生徒から出てきた言葉は「名前」でした。
その次に「東京成徳大学高校の生徒」や「○○部に入っている」等です。
次に、ある本の一節を紹介しました。「虫眼とアニ眼」(養老孟司と宮崎駿の対談をまとめたもの)という本です。
養老:人のせいにするというのは都会の人間の典型的な特徴です。なぜかと言えば、都会というのは人が作ったものしかないんだから、なにが起こったって、追及す
りゃあ人のせいにできる。これが『自然』の中なら仕方ないですむんです。(略)沖縄へ昆虫採集に行ってハブに咬まれれば『仕方がない。バカなヤツだ。』で
すむけれど、東京でハブに咬まれたら、誰が放したんだという責任問題でしょう。
私たちは、「人」が作った世界で生活していると思っているからこそ、何かあれば人のせいにする。
胸に突き刺さる言葉です。
また、このようなことも言っています。
(養老が、『となりのトトロ』で妹がトトロを発見してじーっと見つめている目が素晴らしいと言った上で、現代は人間が本来もつ自然を「観る」感性や目が衰えてきたことを指摘し)
養老:そういうディティールを感知する能力は、本来人間も持っていたはずなんです。昆虫だって知っているんですから。けれどもその能力を閉鎖して、環境を一律に
とらえようとしている。そうやっていくうちに人間の感性はあまってしまったのではないかと。今度はそれを人間関係や都市の人工物に割り当ててるんじゃない
だろうか。(略)
宮崎:その視線の矛先が、いまの時代、人間ばかりに向いているというのは、ドキリとさせられます。(略)人間に関心が向きすぎていて、その結果『アイツが気に入
らない』だとか『アイツはダメなヤツだ』とか、人間に関しての話題ばかりになるんだ、と。
(略)
養老:イジメが深刻になっちゃう根本には、人間ごとにしか関心が向かない狭い世界があって、昔からあったことが拡大されてしまった。いや、拡大というか、世界が
狭くなったぶんだけ、拡大されて見えるんです。
私達は、自然ではなく人間ごとばかりに目が向いていて、その世界だけで生きていると思い込んでいるのかもしれない・・・。
さて、ここで最初の問いに戻ります。
「あなたは誰か?」
この問いに対して生徒が答えたものは、すべて「人間世界」の中で言えることでした。
名前や高校名、部活などは、すべて人間世界の中でのみ通用するものばかりです。
当たり前と言ってしまえばそれまでですが、改めて問いに向かってみてほしいのです。
名前、学歴、職業、性別、国籍など、人間世界で必要とされているような要素を一つ一つはがしていったとき、残ったのものは一体誰なのか、と。
そして生徒に問いかけました。
確かにあなたは東京成徳生だ。
でも、大自然のど真ん中に放り出された自分、戸隠校外学習で星だけが見える真っ暗な空間の中で寝ころんだ自分は、一体誰なのか。
「自分でもよくわからなくなってきた。」
「返答に困る。」
「よくわかっていないことに気づいた。」
「なんとも言えない。」
最初に聞いた時とは異なり、すぐには答えを出せない生徒たちの姿がありました。
一方で、
「これから3学期を通して追求していきたい。」
「おもしろい。もっと考えてみたい。」
等の言葉も返ってきました。
さて、これから「自分とは何か」について様々な教材を通して考えていきます。もちろん授業者の私自身もです。
今日の1時間の授業の中で、生徒の考えはすでに揺れ始めています。
今後の変貌が楽しみです。
自分を深める学習 1年E組担当:藤井志保