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復活! 戸隠校外学習

投稿日2022/07/06

 2020年より2年間、コロナ禍の影響で本校の伝統的行事となっていた戸隠校外学習が残念ながら中止になっていました。 
しかし今年度につきましては、1年生6班編成(2クラスずつ)で7/22~7/30に行うことに決定しました。 
今回の実施についても不安な要素があり、ぎりぎりまで実施の是非について検討を重ねてきました。 
その結果、感染防止対策・安全対策にも十分な体制で臨むことの出来るプログラムが考案され、実施へと踏み切りました。 
また、昨年できなかった2年生の実施も視野に入れ検討しましたが、諸事情により実施は極めて困難であると判断し、泣く泣く中止の判断をいたしました。2年生にとってはとても残念な結果となってしまいました。 

 

 長野県戸隠は、標高1200mほどの位置にあり、夜になると満天の星空が見え、澄んだ川が流れ、野鳥の声もにぎやかで植物も多くの種が観察される自然豊かなところです。 
プログラム初日のキャンプ場で、夜に暗闇を求め寝転がって星空を見上げるソロ体験を行います。そして自然そのものを目、耳、鼻、皮膚などの感覚器官をフルに開いて感じ取ります。知性で自然を理解するのではなく、自分自身の五感を通じ、「感性」で自然を捉えます。 
澄んだ空気が私たちに与える何とも言えない「心地よさ」、自分自身が満天の星空に吸い込まれていくような「自然との一体感」、目に飛び込んでくる草花の優しい緑色が醸し出す「癒し」、そして獣の慟哭やトリッキーな虫の動きに怯える「恐怖感」もあるかもしれません。 
とにかくそれらを全部、身体で受け止めてみる。その受け止めたところに自然に対する「自分の在り方」が見え隠れしてきます。本来「自分」と切り離すことのできない「自然」との関係性に気づいてくれれば・・・と私たち教師は願っています。 
30分の暗闇体験は「沈黙」の中で行われます。沈黙の中で自然を感じていきますが、後半の沈黙時間では多くの生徒が「自分自身」を見つめ、自分と向き合い「自分って何?どう生きればいいの?・・」に向かっていくようです。 
昨日お母さんと喧嘩したけど、あんなこと言わなきゃよかったな・・・自分が悪かったな・・・などと自分を反省し振り返ります。これも自然の持つ効力、「心の純化作用」のようにも感じられます。 

 

 翌日のハイキングでも自然を五感で捉えていきます。 
また「長時間歩く」という行為自体は、取り止めのない色々なことを私たちに考えさせますが、疲れてくると「何も考えない状態=無心」を生み出すこともあります。 
この「何も考えない」というのも大切にしたいことのひとつです。 
あらゆる邪念を自分の頭の中から放り出して空っぽにしたときに、自分の中に何が見えてくるのでしょうか?それとも何も見えないのでしょうか?何もないとするなら自分は誰?・・等々、疑問が湧きだします。 
そしてホテルでの宿泊の夜に「振り返り」を行います。自分が感じたこと、考えたこと疑問に思ったことを文字・言葉に表します。言葉はすべてを表現できるツールではないので、みんな悪戦苦闘します。 
しかし、その表現作業の過程の中で、自分の中にある「心象風景の輪郭」をほんの少しでもつかんでもらえたら・・と願います。 

  

 私たちの学校は「自分を深める学習」という授業の中で、「自分とは『何』でどう生きるべきか?」という壮大な課題を、あらゆる教材を基に「共鳴・共感(あるいは反発)し、思考」していきます。 
戸隠校外学習では、教室ではなく「自分と一体化する自然環境」という教材のなかで、意識的に、あるいは非意識的・潜在的に前述の壮大なテーマに向き合っていきます。 
答えは・・・? 難しいですね。すぐに見つからないかも。 
その答えを無理矢理「言葉・文章」にしなくてもいいのだと思います。必ずしも表現が必要なものではないからです。 
「何か」を感じ取ってくれれば・・・それが東京成徳の戸隠校外学習です。

 

「自分を深める学習」担当 野中修也