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15の君へ・・・15年後の卒業生からの返信

投稿日2025/03/07

15の君へ・・・15年後の卒業生からの返信

自分を深める学習担当者 野中修也

 

 先日、3名の卒業生が来校し、「自分を深める学習」の教材づくりに協力してくれました。

2013年に本校を卒業し、今年31歳を迎える男子の卒業生です。3人とも「クルマいじり同好会」に所属していて、顧問の先生とは未だに付き合いがある好青年たちです。

 本校の「自分を深める学習」では、「15年後の自分に手紙を書く」というプログラムがあります。歌手アンジェラアキさんの「手紙:拝啓15の君へ」を下敷きにしたプログラムで、2010年から始め、現在の授業でも継続しています。

 授業は、誰にも話せないような悩みや不安、苦しみ、そして将来の夢やライフプランを、未来の自分に対して正直に手紙で告白する・・・という内容です。さらにその手紙を封印し自宅で保管し、15年後にそれを開封してほしい!と生徒たちに依頼しています。

そしてその授業開始から15年が過ぎ、今年開封した学年の卒業生が来校してくれたのです。

 来校した卒業生には「15年前の自分に返事、返信をしてほしい」と事前に依頼し、そして今回その課題を持参してくれました。

 15年前に書いた30歳の自分への手紙が、そして30歳になった自分から当時の自分への返信が、「自分の人生にどのような意味を持つのか?」・・・ 現役の生徒にその意味の一部分でも感じてもらえば・・・という願いを込め、「卒業生へのインタビューを通し、15歳の自分の手紙に返事してもらう」という形でこの企画を設定しました。さらにその内容を動画化し、授業にて視聴してもらうことにしました。

 来校してくれた卒業生の成長には、失礼ながら正直驚いています。15年前の自分を想起し、客観視し、そのころの自分の想いに対して素直に返信しています。

・当時の悩みにどう対処すればいいのか、今ならこんなアドバイスを!

・叶った夢にこれからどう向き合っていけばいいのか?

・思わぬ進路になったが、あの時(高校時代)ああすればよかった、という反省。

・家族を持つ身になったが、これからの生き方への覚悟は・・・?

他にもたくさんのお話をしてもらいました。

 

 今の生徒たちには、この卒業生たちの「時を経て起きた変化」(後日、インタビュー動画を授業で視聴します)について「自分もそのような経験をいつかするのだろうか?自分もそんなふうに思えるのだろうか?」という感覚に浸ってもらえたら・・・と願います。

 明確な、疑いようのない「人生への回答」など不可能かもしれません。しかし、経験が生み出す自分なりの回答は、時を経て少しずつ鮮明になってくるのでは?と感じています。

 

 自分を深める学習とは「自分とは何か?という根本を見つめ、どう生きればいいのか?という問いの入り口に立つ」事です。焦って回答を出す必要などありません。

 卒業生の一人が私にこんな話をしてくれました。

 「1年生の時、先生が『このペットボトルの水は私か?それを飲んで胃の中に入った水は私になったのか?』と私たちに問いかけました。その時の哲学的な問いを今でも覚えています。」

 この話を聞いて、私はとてつもない喜びを感じました。15年経っても大切な問いを温めてくれている。そのことに感動するとともに、「自分を深める学習」への確信のようなものを感じました。今すぐ結果を出すことが必ずしも大切な事ではない。むしろ、「答えを出そうとするプロセス=問いを温める時間」こそが、この学習の神髄であるということを!

 卒業生の皆さん、大切なことを私に思い出させてくれてありがとう。

 そして今回の授業づくりに快く協力してくれたことに深く感謝いたします。